こんなに満たされる事があるのか?


ホテルのきっと旨くないモーニングすら、イケルとか思ってしまうほど、ミクとの時間が心地よかった。


ただ、疲れていたからかもしれないが、帰り支度が終わっても、ボクらは時間の許す限り寄り添っていた。

何をするわけでもないが、心地よかった。







「ミク……。じゃあ、この辺で…」

出来る限り人通りの少ない道を歩いたが、これ以上は……。


「うん、楽しかった。………。」


それでも繋いだ手は離れなかった。


「ミク…………。」


「…………。また、っていうか、今晩、連絡するね。」


「うん、じゃあ……。」


「うん、またね……。」


ゆっくり離れていく手の温もりが切ない。


ミクは小さく手を振り、駅へ向かい、ボクは笑顔だけ返して、逆方向へ歩いた。


とりあえず……。


冷静になろう。


気持ちの切り替えの為に勝てないとわかっているエヴァンゲリオンに向かった。アスカ頼むぜ!!












「ただいま〜。」


「お帰り、そろそろと思って、支度してた。」


「どこ行くの?ヨウコ。」


「ふふふっ、友達とディナーよ。上の黒岩さんも一緒。旦那さんは出張だから子供は実家に預けて楽しむんですって…。だから、お願い。来週見なくていいから…。」


「へぇ〜。わかった、いいよ。オマエも楽しんでおいで……。」


「うん、ちょっと、早いけど行くね。」


「あぁ、いってらっしゃい。ヒカル、お父さんと遊ぼ。お母さんにいってらっしゃいして。」


「いってらしゃ〜い。」


「はい、行ってきま〜す。」



…………。




ミクとヨウコはどんな顔して会うのだろうか?


……こわっ。



オレはヒカルと遊びながらゆっくりとスイッチを充分過ぎるほど切り替えた。






そして、また、日常が始まる。


しかし、何もない、今までの日常ではない、違う日常が始まるのだった。