「あら?今日は一人?」


「いや、まあな…。」


「ゆっくりしていくの?」

「いや、まっ、軽くな…」

「あ〜ね。時間潰し…。」

「ハーパー、ロックで…。」


軽くご飯を食べて、いつものバーで時間を潰しておく。


ボク好みの内装と昔から知り合いの女マスターの店だ。


どうでもいい話で盛り上げた後、メールの着信で店を出た。






待ち合わせは同じ通りを両端から歩く形になった。

携帯があるから出来る事だ。




ボクは向こうから歩いて来るミクに心の動きが悟られないように、ジャケットを整えて、タバコに火をつけた。

自分でもわかるぐらい緩んだ口元を締め直し、顔と目を作った。



「ゴメン、待った?」

「あ〜、全然。そうだな、二時間ぐらい?」

「ゴメン…。話が盛り上がって…。」

「はははっ。ウソ、ウソ。待ってないよ」


とりあえず、二人でバーに入った。


会話が楽しかったせいもあって酒がすすんだ。


お互い会う前から飲んでいたせいか、気がつけば二人とも酔っぱらってしまった。








「そろそろ、帰ろうか?タクシーまで送るよ。」

ボクの方から切り出した。

ミクともっと居たかったが、やはりそうもいかないだろう。


ミクは黙ったままだ。

ボクはチェックを済ませ席を立った。

ミクも少しふらつきながら席をたち、ボクらは店をでた。



外は強めの雨が降っていた。

ボクは傘を差し、ミクの肩を抱き寄せて歩き始めた。


「…………………」

ミクが何か言ったようだが聞こえなかった。


会話もなく雨のなかを歩いた。

大通りから一本入った道は人通りがまばらだった。




突然、抱きしめてた肩が外れボクに向き合った。

「ねぇ。今日、帰らなきゃダメ?」


「えっ?」


な、なんですと??