「ねぇ、結衣。
あの話、考えてくれた?」


お母さんが言った“あの話”。
それはこの鳥かごから、別の鳥かごに変わる話。

正直、環境は変わらないから、どっちでも良かった。

だけど、彼が見れなくなるのは寂しいなぁ‥‥と思ってた。




でも、あたしがいなくなる前に、彼がいなくなっちゃった。




「ねぇ、お母さん。
その前に家の周りを散歩してみたいの。
無理はしないから、お願い。」


彼に会えるだろうか。
会えないなら、会えないで終わりだろう。会ったら、会ったで最後の見納めだろう。


「‥‥そうね、引っ越してきて二年もたたないけど、住んだ場所なんだもんね。
近いうちに、一緒に外に出ましょうね。」



あたしはにっこり笑った。