「おっそー」

あたしがグランドに出ると直哉がトラックに着きながらそう言った。

さっきのことがあった手前、何故か恥ずかしい。

『先生なかなか帰してくれなくてさあー』

「大会近いから部活は極力出ろよな!」

『直哉もね!』

「わかってる!」

直哉がトラックに着いた。

────…パン!

音と共に走者が一斉に走り出す。

しかし、直哉はずば抜けて速い。



『はや………』

「でしょ?」
誰かに急に声をかけられた。
横を見ると、綺麗な女の人がたっていた。


『え?』

「ごめんごめん」

その女の人は、確か長距離の史華の先輩…………





「新崎くん。結構期待されてんのよ」

『え?そうなんですか?』
「新崎くん、中学の時歴代1位の記録持ってるの。」

『うそ!』

直哉が?


「ほんとほんと!でね、結構なところから推薦来てたの!」

『たとえば………』

「陸上の名門、滝浪学園とか、鷺ノ宮とか!」

『ぁっ鷺ノ宮は推薦来ました!』

「なにー?自慢?」

先輩はクスクス笑った

嫌な人では無いんだ…

「でね、女形もやりたいから、特待生でここに入ったの!」

『へえー…………』

「結構ハードスケジュールらしいのに、よく持つわよね。」

『ですよね…………』

「そうだ!名前教えて?」

『あたしですか?』

「うん♪」

『麻生秋穂です…』

「秋穂ちゃんね♪あたし宮坂紗智♪よろしくね!」

みやさか…さち

『よっ…よろしくです!!』
「紗智でいいから」

『だっだめですよ!紗智さんって呼ばせてもらいます!』

「ふふっ」

「宮坂ーお前次だぞー」

「はーい」

じゃあ行くね?と呟いてトラックに向かった。