速人の部屋にはベッドとタンスしかなく、閑散としている。

「オレは下で寝るから、秋穂上で寝ろよ」

言い方はキツいけど、なぜか心がホッとした。

『ごめん…ね?』

「………寝れば?」

速人はそれっきり、しゃべらなくなった。


速人は、確かにモテる。

でも、何があって女嫌いになったのか、はわからない…

芸能人ってよくわからないから…

速人は、何で女嫌いなの?


「おい」

突然速人が声をあげた。

『ん?何…』

あたしも若干眠く曖昧な返事になった。

「コンサート…どうだった?」

『よかったよ?』

「俺さ…毎回興奮すんだ…」
『コンサートに?』

「そっ。だからさ?観客が多いから嬉しい…とかじゃなくて…オレの歌を一人でも聞いてくれたら、オレは嬉しい…」

いつになく、多弁な速人。
『意外…』