それでも気力を振り絞れば、何とかなるものだと少年は思った。気が遠くなる思いをして、階段を登り終えた先には、絶景が待っていた。雨で視界は良くないが、それでいても美しさが霞む事はない。
 
 目の前にある夜明けを想わせる城は。
 

「あ! ルシュラとクゥちゃんだ」

 少女が嬉しそうに声をあげ、可愛らしい足取りで少年二人に駆け寄る。優しそうな面差しをした方が、


  

片方の少年が少女を優しく抱きしめる。その手は冷たく震えていて。


「ーー心配したんだからな。リシュに何かあったら僕は……」


「……ごめんね。ルシュラ」


少年の頭をよしよしと撫でる少女。


その隣にいた赤茶の短髪の少年がやれやれと肩をすくめる。もう慣れているからなのか、あまり驚いた様子もない。それから自然に、何の躊躇いもなく手を差し出した。 


「歓迎するぜ。俺はクオイ・ロゼだ。よろしくな」