朝方まで何も話さず、
肩を並べてぼんやりしてる彼女を家まで送った。

「あの…ありがとうございます」

部屋の前で彼女は、
そう言ったまま動かず、

ノブを掴もうとする手を震わせ、

ドアの向こうを凝視してる。

堪らず、
その手を握り締め…

「大丈夫…。荷物持って俺ん家に帰ろう?」

声を掛けていた。

突然の申し込みに、
当然目を見開き俺を見上げる。

「部屋は余ってるし、
君一人増えても変わらないから。
俺も気遣いしないから、
君も何も気にしなくていい」

動揺を隠し、
ゆっくり優しく
尚且つ力強く。

さも当たり前かの様に、
一笑してみせた。