逃げられたか…。

今頼れるのは彼女だけであることを悟る。

彼女が落ち着くのを待って呼んでもらうしかない。

ただ、いつまでモツんだろうか…

流れ出る赤いものは
ゆっくりゆっくり広がり続ける。

どれぐらい経ったのか…
一時間かもしれない、
五分かもしれない。

のそのそと彼女は立ち上がった。

「…すみません」

この時を逃すまいと、
声をあげる。

彼女は、ビクッと跳ね、

走って…逃げた。

予想不可能なことに、
呆気にとられて、
後ろ姿を見つめることしか出来なかった。