【長局:お喜世の方の間】 「上様が、新たにご側室を…。」 お喜世は焦っていた。 お世継ぎを成し、さらにお喜世はその美貌より、将軍、家宣の寵愛を人一倍受けていた。 しかし、上様おん自ら見初めた側室となると、寵愛は斎宮のものとなることなど、目に見えていた。 たとえ、鍋松がいても、斎宮が子を成したら…。 「お喜世様、気を落とされてはなりませぬ。 お喜世様は稀にみるご器量をお持ちにございます。 もっと自信をお持ちくだされ。 上様のご寵愛も、きっとまだまだ受けられまする。」 「絵島……。」