斎宮物語


聞いたとたんに体中から力が抜け、手に持っていた花を落としてしまった。

「本当?
本当にお須免の方様がご懐妊したの?」

「噂ではござりますが…。
その…。
具合がお悪く、お月事も遅れているそうで。
悪阻ではないかと、噂を耳にいたしました。」

「そう…。」

上様に、いまお世継ぎはおられないから、もし若君が生まれれば将軍家は安泰。

側室はそのためにいるようなもの。

喜ばしいこと。

でも……。

“女”としての私が、どうしても喜べない。

悔しく、疎ましく、妬ましく…。

羨ましい。