斎宮物語


「綺麗…。」

心からの言葉だった。

しばらく二人で朧月を見ていた。

「冷えて参りました。
風邪を引かぬよう、奥に戻りませぬか?」

自然と口調がおっとりとする。

「…。
そうじゃのう。」

上様はとても小さな声で言った。

そのまま、上様の身体がゆっくり動く。

奥に戻るんだと思った私は、上様について行こうとした。

「今しばらく…、そなたと月を見ていたい。」

そう言って、私を抱きしめた。

その力は段々と強くなる。

私には、その強い腕がとても心地よくて…。

ずっとこうしていて欲しいと思った。