斎宮物語


上様の少し後を歩こうとすると、不意に手に暖かい感覚がした。

「え?」

私の手を上様が握っていたのだ。

上様の方を見上げると、上様はにっこり微笑んでいる。

「ほれ、綺麗な朧月じゃ。」

上様の視線をたどると、先程よりも美しい朧月が、輝いていた。