シャラン、シャラン、シャラン 聞き慣れた鈴の音がする。 それと重なり合うように近づいて来る足音。 一瞬、足音が止まった。 私は、深く頭を下げる。 「いつき。」 上様は、最初こそ私を斎宮、宮と呼んでいたけれど、いまはいつきと呼んでくれる。 私は面を上げた。 「見たか? 今宵は美しい朧月じゃったぞ。」 「はい。 ここに来る途中、拝見致しました。」 「そなたと共に見てみたいのう。」 「えぇ。 私も、上様と共に見てみとうございます。」 「見に行くか?」 「え?」