「怒らないの?」
「どうしてですか?」
「私は、葵をあなたから奪ったのよ?」
「いいえ、それは全然気にしません。おかげで、フランスまで行けました。それに、変われました。だからむしろ、感謝したいくらいです」
絵美さんは酷く驚いていた。
成長するきっかけをくれたのだから、怒る理由もない。
本当は絵美さんは素敵な人なんだってわかった。
「じゃあ、償いとして友達になりましょ?」
腑に落ちないって表情だったから、提案してみた。
素敵な人だから、すぐ友達になれるよ。
「わ、わかったわ。じゃあ敬語は止めて、絵美と呼んで」
「絵美、偉そうだよ」
葵さんは少し困ったように横から言った。



