通された席は、ちょうど海を見下ろせる場所にある。
眺めが素敵だね、なんて話し声はやけに店内に響く。
人気が少ないのは味が悪いとかじゃなくて、元々此処に来る人が少ないみたい。
「ご注文は?」
「メロンソーダありますか?」
「はい!」
確か今まではなかった。
真理がきっとメニューに入れてくれたんだと思う。
「ん、じゃあメロンソーダとクロワッサン」
「俺は、ホットコーヒーとクロワッサン」
ペコッと頭を下げて店員が奥へ戻っていった。
「あの子、可愛いね」
葵は呟いた。
だから、私も頷いた。
嫉妬とかは別にない。
私も可愛いって思ったから。



