例によって例のごとく、俺は階段の手すりを滑り降りた。
こういう時は、俺みたくマッチョじゃない方が身軽でいいんだよな。
盗賊たちは真面目に階段を走り降りている。


一階についた。
塔の正面入口には、他の警備がいるはずだ。
そいつらに戦ってもらえばいい。


「みんな~~っ!!!
盗賊だぞっ!!!」


俺のバカでかい声が玄関ホールに響きわたり、入口を警備していた4人のマッチョが振り返った。
そもそもここの警備員は、多少腕が立つ聞くし。
マッチョ対マッチョだな。
まぁ頑張ってくれ。



俺は叫んだだけのまま、唖然とする仲間たちの間を素早くすり抜け、風のように逃げ去った。

(ちょろいぜ!)

遥か後方で争う音が聴こえる。
五分五分ってところだな。
逃げ出したくせに鼻で笑っていると、いつの間にか路地裏に入り込んでいた。


「暗くて気づかなかったなぁ…」


少し不安になりつつも、さっさと表にでることにした。
ゴミとか何かの死骸とかを時折蹴り飛ばしながら、しんと冷える暗闇を走っていく。


―― ゴンッ…!


鈍い音と共に、鋭い痛みが後頭部を襲った。

あぁ、またバカになる…

ぼんやりする頭でそんなことを思いながら、俺は気を失った。