翌朝、荷物をまとめて午前中歩き通すと、森の終わりに近づいてきた。
見る先は農村のようだ。
牛がいたり、ヤギがいたり。
昔なつかしの砂利道を歩いていると、目の前から美女が走ってくる。
思わず見とれていると、案の定……


―― ドンッ…!


「…いってぇ…」

「痛ぁっ!!!
あんたどこ見てんのよ?!
急いでるの見りゃわかるでしょ?!
さっさと避けなさいよ、グズ!!!」


「…す、すみません…。」


至極下品な捨て台詞を言うや否や、美女はさっさと駆け出していった。


(性格悪ぃ~…。)

俺はむくれた顔でまた歩き出す。

綺麗なひとだったな…。
腰までとどきそうな、サラサラした漆黒の髪。
気の強そうな、きりっとした目。
背が高くすらっとしていて、思わず見とれてしまった。

でも、…


「性格悪すぎだしっ!!!」


大声で叫び、芽生えそうだった恋心を一瞬にして打ち消した。