森の中は木が密集していて、歩きづらい。
それでも一度も躓くことなく、楽しみながら進んでいた。
時折、獣の吠える声が聞こえる。
念のため、剣を抜いて手に持っていた。
邪魔な枝をぶったぎりながら前進していると、とうとう出会ってしまった。


「く、クマだぁ…!
やった、肉だぁ~っ!」


腹が減り、どうしようもなく肉が喰いたかった俺は、迷わずクマに戦いを挑んだ。






―― 5分後。






食い物がかかった俺は異常に強かった。
クマとの短い決闘の末、俺はものの見事に勝利をおさめた。


「へへっ、ちょろ~い!」


満足感に浸りつつ、たきぎの準備をする。
今夜はここで野宿になりそうだ。

袋に入っていた火打ち石で火をつける。
火加減がちょうどいい具合になると、クマ肉を枝に刺して焼いた。


(ちょーいい匂い…)


自分が食べるぶんを焼いていると、いつのまにか他の動物たちが集まってきていた。

子キツネが物欲しげな表情で俺を見つめる。


「…あまってるやつ、食っていいぞ。」


と許可すると、集まった動物たちは仕とめたばかりのクマに群がっていった。


言葉がわかるのかな。
それなら殺すことなかったな…。
いや、でも肉食わせてくださいって言って了解する奴いないだろうな。


「いただきます。」


心をこめて呟き、焼き上がった肉にかじりついた。
命のありがたみに少し感動した。




それから袋を枕に、マントを布団代わりにして、木の根元でぐっすり眠った。
時計は、手を示していた。
明日はいいことが起こる予感がした。