「よし、良いじゃろう。
最後に…これを渡しておこう。
これは、おぬしのものじゃ。今は知らんじゃろうがな。
使い方は後々わかるはずじゃ。」


手渡されたのは、金の時計だった。
鎖で首からかけるタイプで、繊細な模様が施された蓋を開けると、今まで見たことがないほど美しい文字盤だった。


(綺麗だ…)


深い光沢を放つ文字盤は、どうやら夜空をイメージしたものらしい。
群青色の盤で、針は月と星が連なっている。
そして、その月と星は心なしかぼんやりと光っているように見える。
まるで本物のように。


よく見ると、時計なら数字がかかれているはずの場所には、小さいけど非常に凝った絵が刻まれている。
全部で八つ。


「気になるかね?
それは、“天界の守護団”の七道具の一つじゃ。
失われた秘宝とも言われておる。」


「秘宝…?
塔のてっぺんにあるんじゃないのか?」


「いずれその日が来るじゃろう。」


いずれ…ってことは、今はないのか。
やっぱりガセネタだったんだな。

守護団とかなんとか、おかしなことをゆってるけど、秘宝ってのは本当っぽい気がする。
手に持ってるだけでも恐れ入りそうな逸品。
この時計、不思議なことにべたべた触っても指紋がつかないし、つぎ目ひとつない。