そのとき、ママは踵を返し、玄関の方へ早足で歩いていった。
あたしの中で、何かが壊れていく音がする。
「!!行かないでぇ~!ママ~~!」
泣き叫びながら、必死にママを追いかける。
だけど、小さいあたしがどんなにがんばって走っても、
大人のお母さんとの距離は縮まることもなく、
むしろだんだん離れていく。
お兄さんも、あたしが気付かない間に用意していた、大きな荷物を持って
ママの後を歩く。
「いかないで~!!!」
あたしの必死の願いもむなしく、お母さんは靴を履き始めている。
_____パタン
ドアが開いて、閉まる音が、あたしの耳をすり抜けていく。
もう、1人。
ママも、お兄さんも
誰もいない。
アタシヒトリダケ。
