私が困った顔をしていても、お兄さんは目を向けようともしない。


それどころか、あたしのことを空気そのもののように
扱われているような気さえしてくる。


仕方なく熱々のカップラーメンを口にしていると、


洗面所で鏡を見ながら手に何かのクリームをつけて、髪をいじっている


お兄さんの姿が目に入る。


しばらくしてジャージからチャラチャラした、脚の短く見える服に


着替えてきたお兄さんは、いつものにおいのきつい香水をつけていた。





ーーーパタンッ






壊れかけたドアの音が、あたしにお兄さんが外に出かけたことを知らせる



お兄さんは、いつも真夜中に帰ってくる。


歩くと床がミシミシなるから、分かるんだ。


だから、毎晩目が覚めてしまうんだけど・・


ひどい時は数日間どこかに行っていたり、朝方に帰ってくることだってある。




これがいつもの日常だった。



なにもしない、退屈な毎日。







でも、このときのあたしは、まだ幸せだったんだ。



だって、何も知らずに過ごしてきたから。