物心がついたとき、あたしと一緒にいたのは、


いつも怖い顔をしたお兄さんだった。


名前は知らなくても良かったし、


お兄さんも教えてくれなかったけど、


ある日お兄さんは言ったんだ。





「お前に母親はいないんだ」






って。


でも、あたしは覚えてたんだ。


お母さんのことを。