目の前にふわり、ふわりと淡いピンクの花弁が舞うとき、
それは、雪を彷彿とさせて私の心を掻き乱す…───











それは夏のある日だった。

部活があって帰りが遅くなった。
ひぐらしの鳴き声が聞こえる。

(だいぶ遅くなっちゃった…)


リン、リン


ひぐらしの声に混じって森の中から聞こえてくる澄んだ音。

(鈴の音…?)

私は引っ張られる様に鈴の音がする方へ歩いていった。
そのあいだにも時折リン、リンと音は鳴っている。

暫く歩くと急に視界が開けた。
広場の様になったその中心にはお墓の様に石が積まれていた。

(でもお墓にしては歪な積み方だなぁ…)


『タ、スケテ…』

「!」

(今、声が…)

『ココカラ、出シテ…』

「どこっ!?」

『コノ石カラ、出シテ…!』

「誰なのっ?」

『苦シイノ…!早ク出シテ…!』

(出すって言ったってどうやって…)

取り敢えず私はこの石の山を壊すことしか思い付かなくて、それを実行することにした。