「ところで、降矢って指1本だけで自衛隊動かせるんでしょ?」


降矢というのは、クラスの金持ちの子。

両親が自衛隊で働いているという噂がある。


「そうだよ。あいつが指鳴らしたら戦車とかヘリコプターとかいっぱい降りてくるもん。」


たしかに、戦車とかヘリコプターが出てきそうな家だけれど。


「最強だね。」


疲れたあたしはモップを置き、そう言うと、木内にサボるなよ、と言われた。

あんたに言われたくない。


「あいつの家、おれんちと違って、見た目小さいじゃん。」


木内の家を知らないから何とも言えないけれど、降矢の家はかなりでかい。

それよりもでかい木内の家なんて知らない。


「そうなんだ。」

「そのかわり、地下1階にプール、2階は戦車とかの格納庫。」


プールがあるっていうのはうらやましい。

水泳は、わりかし好きだ。


「すげー・・・。」

「で、あいつの家のうえに、天空の城ラピュタみたいな島がある。」


ラピュタ見たことがないから分かりにくいけれど、そんな城があるなら素晴らしい。


「かっけー!」

「降矢の家は、見せ掛けの戦車ハウス。」


戦車ハウスとは、もう冗談も行き過ぎると本当に聞こえる。


「そうなの?」

「屋根裏部屋から大砲発射できる。」

「すご~い。」


最早呆れてつっこむのも面倒だ。


「何かあったら家が出動。」

「かっけー!」

「いわゆるハウルの動く城みたいな?」


ハウルは見たことがあるから分かる。

降矢の家はそんなぼろくない。


「あー、なるほどね。」

「たまにこのガラスの横を銃弾が横切るの、見えない?窓側のくせに。」


たしかにあたしは窓際の一番後ろという特等席だ。


「授業に集中して見てないよ。」


しかしあたしは真面目なので絶対に授業を聞かずに窓の外を見たりしない。


「いい子ちゃんめ。」

「それって、褒めてる?」

「まさか。」


むかついたので、ボカンと笑顔の一発で殴っておいた。

優等生で何が悪い!