「……未来では星が見れないのですか…それはとても残念ですね」


「……?」



「いえね、月を見ていたなんて口実で…本当はあなたが起きるのを待っていたんですよ」





……何処から出てきたか、月は雲に隠れてしまい彼女の顔の表情は確認出来なくなった



それでも彼女の声色は闇に不釣り合いに明るく弾む



「…あなた中々起きてくれないから詰まんないなぁって……そうしたら丁度、月が出てるでしょう?お月様のお陰で暇を持て余す事が無くて助かりました」




「…あたしを…待ってた?」




「………ええ……起きたら連れて来いと、土方さんが」







黒い雲はゆっくりと蠢く



雲の切れ間から月明かりが僅かに射し込み、彼女の横顔を明るく照らした






「……あなたは…誰…?」




彼女はゆっくりと立ち上がると、月影に髪を靡かせる





「…さあ起きて下さい…あなたには聞きたい事が山程あるのですよ……近藤さんも待ちかねてるのですから」





言い残すと彼女はお構い無しに廊下をすたすたと進んで行ってしまった



反射的に布団を翻して直ぐ様彼女を追い掛ける




けれど障子戸の外は真っ暗闇で



照明具等存在しないこの世界、月の明かりのみが頼りなのだけど肝心の月は雲に隠れてしまっていた



呼び止めようとしたけれど名前を知らない聞いていない




第一大きな声を出して良いものなのだろうか