「……はて」






納得のいかない様な声が上げられたと同時に、喉元に位置付けられていた刃物が下げられると



「…失敬」



…なんて気持ちが篭ってるんだかどうだかわからない詫びの言葉も添えられた





緊迫する空気に緊縛されていた身体は漸く自由を取り戻し、反射的に首は右隣の人物の顔を確かめようと右方向へと向かう




するとその人物も此方を見ていて、傾斜線が計算されてたかの様に目と目が合った



「…あなたは…誰ですか?」




毛先を綺麗に切り揃えられた髪は後頭部で一つに結い上げられ


肌は大変白く、一見不健康なイメージが縫い付けられる


垂れ気味の小さな黒目は曇りこそないが光だって差し込まない様な漆黒の色


薄い唇はひたすらに真一文字に閉じている



……大変、無愛想で取っ付きにくそうな印象が垣間見えた




「…はて」



又もや薄い唇が機械的に開閉されると



「俺は貴女に名乗らなければいけない様な筋合いがあるのだろうか」




思いもよらない憎まれ口を叩き出した





「…は?」





第一印象というものは大変アテになるらしい




…特にこの人は軍を抜いて