兄は以前から、東条グループに産業スパイとして乗り込んでいた。
新規事業を立ち上げたばかりの東条の製品情報を、得意先にリークするため。
バレるどころか、社長の信頼まで築いていたほどだというのに。
ウソでしょう・・・?
「・・・・・」
突然の事に驚くばかりで、何も尋ねられない私。
「雅貴様が原因だ」
「雅貴さ、ま…?」
兄の言葉を反芻するように尋ね返すのが、今は精一杯だった。
「雅貴様が、社長の女に手を出したから…。
こう言えば、オマエも察しがつくだろ?」
「っ・・・」
あまりに簡素な説明でも、言いたいことはすぐに理解できた。

