5階でエレベーターを降りると、左手に突き進んだ一番奥の部屋。
私の部屋とは段違いの、その部屋が兄の部屋だ・・・
ガチャッ――
インターフォンを鳴らす前に、ガバッとドアが開かれた。
「あれ…、珍しいわね?」
「いいから、入って」
「うん、お邪魔します…」
問い掛けにも答えず、思いつめた様子で中へと誘ってきて。
いつもとは違う表情に、嫌な予感が脳裏を過ぎった。
リビングに入っていくと、そのままソファに腰を下ろした私たち。
対峙している兄の悟(サトル)は、とても穏やかでデキタ人間――
後藤家の洗濯機的な仕事をしていても、文句ひとつ言わないし。
当然、成績も優秀で仕事もソツなくこなしてしまう能力もある。

