重い足取りだと悟られない為にゆっくりと歩いて、最後に後ろを振り返った。
「雅貴、分かってくれたみたいよ?」
最後に一度くらい…、呼び捨てにしても良いでしょう?
「フッ…、サンキュ!」
そんな笑顔を向けられるのは、今後も一切ないだろうから。
「どういたしまして?」
気づかれないように、余裕ぶって笑うのは強がりだけど・・・
バタンッ――
スイートルームを完全に脱出すると、急いでエレベーターに乗り込んだ。
「っ・・・」
それまで堪えていた涙が、途端に押し寄せてきた。
彼女と雅貴様の様子を見ていれば、任務は成功だったよね?
長居をするにしても、私はもう限界だったの…。

