古い木で作られたベンチに腰をかけると、奈津美は話していいかと尋ねてきた。

そのためにこうしているのだ、断る理由などない。

『梶原さんは、随分前からこのことを調べてるみたいですね。
きっかけは、なんだったのですか? 』

梶原は紀子の話しと箱根の事故、掲示板のカキコミについての話しを順を追って出来るだけ細かく伝えた。

ちゃんと聞いているのだろうか・・・?
奈津美はぼんやりと音楽でも聴くように目を閉じて頭を揺らしている。

『あの・・・ 片岡さん? 』

奈津美がゆっくり目を開ける。


『そうなの・・・ そんなに沢山の方が被害に・・・・あの犬がねぇ・・・』


梶原はなんとなく奈津美に苦手意識を感じてしまう。

『少女の事故のことで、奈津美さんが知っていることを教えてもらえますか? 』


声が尖んがってしまいそうになるのを抑える。