タエは、大嫌いな蛇に遭遇した時の恐怖を思いだし、つい身構える。

草村からひょっこりと顔を覗かせたのは、愛くるしい顔をした子犬だった。


『なんだい、ワン公かい・・・
脅かさないでおくれよ・・』

ほぉっと胸を撫で下ろす。


子犬は恐る恐るタエの元へ近付くと、鼻を鳴らした。

『ずいぶん痩せているじゃないか。 お前、迷子なのかい?・・・』

タエは腰にぶら下げた巾着から、カリントウを取り出した。

沢山汗をかいた時、なぜだか甘い物が欲しくなるタエは、菓子を持ち歩く癖がある。


子犬は目を輝かせるようにして、喜んでそれを平らげた。


『フーン、フィーン、キュゥン・・・』

クリクリした目玉をタエに向けて、丸い尻尾を小刻みに振りながら、ソワソワと動き回る。