それは、いつものふんわりとした優しいのぶとは、違う─
怒りをあらわにした男の姿。
ナツは、慌てた様子もなく、すっと立ち上がった。
まるで、こんなことは、何度も経験したことだといわんばかりに…
カラン…
小さな音がして、ナツから、何かが落ちた。
床の上で、キラッと光ったそれは、
─指輪…?
あたしは、とっさに確かめるように傍に立つナツの、左手を…薬指を見た。
─外されている。…どうして?
いつも必ず、はめていたはずなのに…
あたしは、のぶが、見ていることも忘れて、ナツにすがるような目で、問いかけた。
「指輪…どうして…」
ナツは、のぶから、視線を外し、あたしを見て、ふっと、笑う。
何かに、観念したような笑顔。
「…有効期限切れだから。」
「えっ…?」
あたしは、ナツの言った意味が理解出来なかった。
「本当は、もう、ずいぶん前からなんだ…」
─…何、が…?
あたしの、頬にナツの手が、優しく触れた。
その時、
「ユキに触んなッ!!」
のぶの声が店に響く。
あたしの体がビクッと震えて…
ナツは、あたしを見たまま、フッと笑うと、
「わかったよ。」
そう言って、あたしから、離れた。
*


