幼いあたしには 名前が二つあった。 ひとつは、霞。 もうひとつは、ゆき。 大好きなお兄ちゃんも二人いた。 一人は、和希お兄ちゃん。 もう一人は、のぶお兄ちゃん。 あたしたち二人は、父さんの休日になると、よく遊びに行った。 のぶお兄ちゃんのお家へ。 霞の名前は、いつもの名前。 ゆきの名前は、特別な名前。 それは、あたしが白くて雪みたいだからと言ってのぶお兄ちゃんがつけてくれた…… あたしとのぶお兄ちゃんだけの大事な名前だったから。 *