あたしは、のぶの事が気になって
学校へ行っても、授業中も…なにをしていてもそればっかり、考えてしまう。
家に帰ってもぼんやりして、なにも手に着かない。
*****
あたしは、兄が死んでから、一度も兄の部屋に入れないでいた。
それは、父と母もおなじで…
兄の部屋は兄がいなくなったあの日のままで、時間が止まったようになっていた。
1ヶ月に一度掃除に入ってもらう以外は、誰も入らなかった。
だけど、今日は、無性に兄の部屋に行きたくなった。
あたしは、自分の部屋を出ると、兄の部屋へと向かった。
ガチャ…
ドアを開けて中に入る。
「……」
カーテンを閉めた部屋は、薄暗かったけれど…
懐かしい兄の香りがした。
あたしの大好きな匂い。
「和希兄さん。」
小さく呟いてベッドへ腰かける。
目を瞑ると
『霞…』
兄さんの声が聞こえた気がして、思わず目を開いた。
椅子に腰かける兄さんが見えて、ドキッとした。
笑顔であたしを見る兄さん…
「和希兄さん?」
声をかけるとスッと消えてしまって…
胸が痛くなった…
*


