「――あ。そうだ」




暗闇に溶けていってしまいそうになっていた姿が振り返る。




振り返った男は、やっぱり口角は上がっていて。


「足。病院に行って下さいね」






「え?」




「かかりつけの病院があるかもしれないけれど……大学病院ならここから近いし、連絡しときますから」


「……大学病院?」




「知り合いが働いてるんで。結構すぐ治るって有名だし。診察料は全部俺が払うよう病院には言っておくから。必ず」




「や、別に病院に行かなくても……」





ただくじいただけ。学生の時から挫いてしまうことは何度かあったけどかかりつけなんてないし、くじいただけで病院に行く必要も無い。



冷やしておけばすぐに直る。それが一般でしょ?いつもそうしてきた。




わざわざ

病院へ行くなんて。


大げさな…と息を吐き出した私に、

いやいや、と真剣な眼差しになる穂積さん。



「絶対に大学病院で診てもらって」




「えー、、」


「…後で支障が出たりしたらこっちが迷惑なんで。ただの捻挫ならそれでいいし」







「……」



めいわく。笑顔で。見にくいけれど笑顔で。言われてピクリ、と顔が引きつった。




そうか。



後から足が痛いだのなんだの言われると困るから

一応病院で診てもらえと。