「……なんで穂積さんまで降りてるんですか」


また車線へと戻って消えていったタクシーを見送った後、隣にいる男を睨む。






「責任もって送り届けなきゃね」




「新手の襲い方?」


「まさか。純粋にケガ人をほっとけないだけですけど?」





「……、」

「襲われるかもって警戒してるの?」


ここまで強引に来られると。


純粋に心配でなのだろうかとついつい疑惑の目で見てしまう。




そんな私の顔を見てははっ、とバカにしたように笑ってはき捨てた男。


自分でも狙われるほどいい女だとは思っていない。



だけど、純粋にケガ人を送ってくれてるやさしい人に見えない訳で。

自意識過剰だと思われると



カアァっと熱が上がってきたのが分かるけれど。


ここまで強引に、それも怪しげな男に付きまとわれて警戒しないほど無垢じゃない。



…はぁ。



「ちょっと待ってよ」


バックから携帯を取り出し

自宅へ向かって歩き出す。


明らかにおかしな歩き方にはなってしまっているけれど早く帰りたい。

すぐに後ろを追ってくる足音。




「大丈夫だって。襲ったりしないから」



「別に襲われるなんて――」