バックから財布を取り出してお金を。

メーターを見れば1530円で。細かいお金まで探して渡す時間が面倒で



2000円抜き取り隣に座っている男のジーンズの上に置く。




「これ」


「いいよ、別に」

「いいえ。渡しておきますから降りるときについでに払っておいて下さい」



それじゃぁ。運転手さんを見れば後方から来る車を気にしつつドアを開けてくれた。



よいしょ、と手で体を動かしながら降りようとする。


と、ぐっと掴まれた腕。

いきなり腕に力が加わり私は目を見開く。



「これお金。と、運転手さーん、車来ましたよ。ドア閉めて下さい」

引きとめられ、体がまだドアから出ない内にバタン、と再度ドアが閉まってしまう。



その横を通過していく乗用車。









「ちょっと、」



「俺もここで降りますから。あ、おつり470円」



「あ、はい」


「ちょっと!何して、」



「ん?」




「ん?じゃない!離して!」



「ちょっと待ってね」
「誰が待つかっ!」



グイグイと腕を引っ張っても離さない男。

力強い。振りほどけない。そうこうしているうちに



運転手さんがおつりを手のひらを差し出した男の上に乗せてドアを開ける。


「ありがとうございました」



「こちらこそ。ほら、行くよ」



「はぁ?」


「そっちから降りたら危ないって。ただでさえ怪我してんのに。轢かれたら困るし」








ドアが開いて、腕を持ったまま降りた男。

私も半ば引きづられるようにして降りる。


アスファルトにヒールが着いた瞬間、またズキン、と走る痛みに思わず顔を歪めれば、「ほら無理しないで」とまるで見透かしてるかのように笑われながら上から言われた。