はは、と苦笑混じりに告げる。
゛ケガ?って大丈夫?
「挫いちゃっただけなんで、痛いですけど大丈夫――だと思います。ただ、約束……」
゛それは気にしなくて良いから。無理しないで。今、どこ?駅?゛
「あ、タクシー拾って、家に帰ってる所です」
……そっか。本当に大丈夫?゛
本当に心配してくれていると電波が伝えてくれる声から分かる。自然と笑顔、が。
「大丈夫です」
゛ちゃんと冷やすんだよ?無理しないこと。゛
「はい」
゛じゃあね――゛
プチっと切れる音。耳から電話を離す。横をみれば相変わらず窓の外を見ていて。
視線を外して、私も自分側の窓の外を、見つめた。
「あっ、ここ!ここで止めてください」
いつも自分が徒歩で歩いている道。足の痛みも時間が経てば少しはマシになってくるものだと思っていたけれど、なるどころか。
むしろひどくなっているような気がする。顔には出さずに少しだけ足に力を入れてみたりしているけど、その度にズキンと痛みが走ってしまう。
本当は自宅の前までタクシーを着けてくれたほうが
歩く距離が少なくて助かるのだけれど。
乗っているのは私だけでじゃない。見知らぬ男……それも半ば強引にタクシーに連れ込んできた男に自分の家を教える無防備な人なんていないと思う。
少し歩くことになるけれど大通りの止めやすそうなところで声をかければ、
はい、と小さく返事をしてすぐにウインカーを出し脇に着けてくれるタクシー。



