「んー?」
「何で降りてるの、私電車に乗るつもりだったんだけど!」
トントン、と、
段差を降りる度に揺れる体の中、私は足と腕を不安定なままにぶらつかせる。
「聞いてる!?下ろせ馬鹿!」
「下ろしたら痛いでしょ?」
「この恰好の方が痛いわ!」
足じゃなくて周りからの視線が。
こんなこと、普通しない。しれっと抱えてるこの男が信じられない。
「おーろーせ!」
そんな思いでいっぱいだった私。
「大丈夫大丈夫!」
「何が!」
意味が分からない。―――いくら暴れてもおろしてくれそうな気配はない。
無駄に暴れる姿を見られたくなく、仕方なく俯くようにして顔を隠した。
一言二言事情を駅員さんに話して端から改札を抜ける。
一瞬だけ見えた駅員さんは笑顔で。
こんな私を見てどう思っていたのだろうか。
駅の外、人は相変わらず少ないとは言えないけれど駅のような明るさはないからさっきよりはマシ。



