「……次から気を付けてくださいね!!」
電車、乗らなきゃ……、待たせちゃう。
男に背を向けて階段を上りはじめる。
階段を上る度に痛む足首。
周りの目なんか気にせずいっそヒールを脱いでしまおうか。
痛い足首に何振り構っていられない。そのくらいの痛さ。痛みを和らげることが優先――、そう思った時。
「――――分かった。慰謝料払うよ」
すぐそば。
耳元で聞こえたそんな言葉を頭が理解したと同時、反応するよりも先に体が、浮いた。
「わ、」
高くなった視界。
下から上がってきた人が、少し驚いたように目を見開いて私を見てる。抱えられてる、と分かった瞬間体が全体に生まれる熱。
焦る私、何を考えているのか周りを気にせず動き出す男。
しかも―――階段上るのではなく下りてるし!
「ちょっと、降ろして!何してるの!」



