とある男女の攻防戦


はぁ、と口からは出てこないが

心の中で大きなため息をつき頭を垂れる。



と、




「ほら」



ひらひらと差し出される手。

「あ、大丈夫です……」




「なんで今更敬語?」







「うるさい」





意味なんかない。なんとなくだ。

いつまでもこんな所に座り込んでいたら邪魔だ。



恥ずかしい。早く立ち去りたい。羞恥心が沸き上がって来て差し出された手に頼ることなく立ち上がろうと手摺りを握った手に力を入れる、と。





「っ……、」

痛みに思わず、顔が歪んだ。コレ、ヤバイかもしれない。

膝を見ればうっすらと血が滲んでる。でも、膝よりも。……足首。ヒールでしっかりと足を地に付けた時に感じた違和感。