「いやぁああああ!!!」
「っ!?」
その瞬間、突如聞こえた悲鳴。
それは、廊下から聞こえてきた。
俺は一華と繋いでいた手を離し、誰よりも先に教室から飛び出した。
「ひぃぃいいい!!」
「ハッ!ビビッてんじゃねーよ!!」
其処に居たのは、2組の伊達虎太郎だ。
コイツは、強盗や薬で何度も少年院に送られていた男。
そんな伊達に踏み潰されているのは、岩谷昌晃。
物静かな奴で、いつも本を読んでいる印象しかない。
伊達は嬉しそうな顔で、岩谷を殴っている。
「おい!殺してもいいんだよなぁ!?
最高じゃねぇぇええか!!!」
…全身に、鳥肌が立った。
そんな俺の後ろから、物凄い足音が聞こえた。
「いやああああ!」
「逃げろ!!」
「死にたくない!!!」
全てのクラスから、皆が逃げていく。
恐らく、伊達の行動を見てみんなパニックになったらしい。
「クソッ!」
俺も教室へと引き返す。
「…翼!!」
「……つ、ばさ…」
其処には、呆然と俺を見る琉聖と震える一華がいた。
俺はゆっくりと二人に近づき、一華の手を取った。
「行くぞ、とりあえず安全な場所を探そう」
そう言った俺に、二人は強く頷いた。