司令室に近づくにつれて秀樹の足取りは重くなっていった。先程まで無表情だった顔には、これでもかというほどしかめられている

ようやく司令室まで来た秀樹は、慣れた手つきで立派な扉を押し開けた

「・・レティ、来たぞ」

言葉通り仕事に没頭していた女性が、秀樹の声に反応してちらと顔を上げた

「戻ったか。すまないな、急に呼び出して」

淡々とそういいながら向かいの席を勧め、秀樹が座るのを確認してから眼鏡を外した

「・・・・・・用事は?」

「今日、お前達も含めて三組が鬼狩りに行ってな。一組だけ、捕獲してきた」

「・・捕獲?」

「ややこしいことになったらしい」

溜め息をついた渋い表情のまま、レティは綺麗なブロンドの髪をかき上げた



まとめるなら、今回行ったのが新米だった。相手の能力は不明、途中で変身だとわかった。追い詰めたところ、

「・・・・逃げられたか」

「・・人混みに逃げ込まれたらしい。そこで何度か能力を使われた。逃げられないようになったところで始末しようとして・・・・相手に完全にしらばっくれられてな。そうなると、見た目からは人間も鬼憑きもわからなくなる。近づくのは危険。・・お前なら区別がつくだろ?」

「・・・・・・そいつは何処に?」

「人かもしれないからな、客室だ。もちろん監視はしているがな」

秀樹は無言で立ち上がって扉に向かった。小さく開いてから横目でレティに視線を送り、

「・・鬼憑きなら、その場で始末する」

静かにそう言い残すと、反応も待たずに部屋から消えた。レティは長く息を吐くと後ろ髪を解いた。長い髪が肩にかかり、首を包む




「誰がそこまで言った・・」



レティの呟きは、こもった空気と一緒に沈み込んだ