運命の扉


優しさに甘えてるだけかもしれない。

それでも、莉紗と優斗の関係に悩むよりは幸せになれると思った。

カバンの中から携帯を取り出す。
電話帳を開いて敬ちゃんの名前を探し出し、迷うことなく発信ボタンを押した。

耳元で聞こえる呼び出し音。

「もしも〜し。」

3コール鳴るか鳴らないかで受話器から敬ちゃんの声が響いた。

「あっ。もしもし…」
「莉奈?どうした?」

あたしからの急な電話に驚いた様子だった。

「あの…さっきのことなんだけど…」

一瞬、受話器の向こう側の空気が止まった気がした。


「うん……」

「……ありがとう。」

「えっ?」

「あたしなんかを好きって言ってくれて…。ビックリしたけど嬉しかった。」

彼は今、どんな気持ちなのだろうか。

「まだ敬ちゃんと知り合って2日しか経ってないから、気持ちに答えることは難しいと思うの…」

「そう…だよな…。」

「でもね、少しずつ向き合っていきたい…」

きっと。
敬ちゃんなら、大丈夫。
それだけはわかるんだ。

「それって…」
「最初は友達としてお付き合いして下さい。」
「ま……まじで?本当に?」

電話越しの敬ちゃんは嬉しさを隠せない様子だった。