土間の上にゴザを敷き、カッパを寝かせました。
頭の上の皿が乾くと死んでしまうと聞いたことがありましたから、ちょろちょろと水をかけてやりました。

その甲斐あってか、しばらくするとカッパは少し元気を取り戻したようでした。
相変わらず身体は動かないようでしたが、しゃべれるほどに回復したのか、たどたどしくも一所懸命話し始めました。

「お、お願いがあったんでございます。娘が嫁に行くことになりまして、その送り舟をサイさんにお頼みしたいのでございます」

「送り舟?」

「はい、今度の満月の夜に下川に嫁ぐことになっております。たかだかカッパとはいえ、男手ひとつで育て上げた大切な娘でございます。肩身の狭い思いだけはさせたくないのでございます」

サイはじっとカッパの話を聞いていました。
ようやく納得がいったのか、大きく頷きました。

「そういうことじゃったんか。わかった、わかった。送り舟かぁ。久しぶりじゃなぁ。わかったから、安心して休め」

そう言うと、土間からカッパを抱きかかえ、布団に寝かせてやりました。