でも、何か違和感があった。

どこかで見たことのあるフォームだった。



あの軸足の力強さ、安定感…

あの出所を隠す左腕…

あの流れるみたいに綺麗なフォーム…






「……ッッ!!!!」



ツカツカとグラウンドの中に入っていって、

あたしの視線は霄くんから離れない。

捕手をしている先輩があたしに

気付いて、

あたしを止めようと思ったけど、

今のあたしは止まらない。





「あなた…東條翼くんでしょ…」



あたしの言葉に、

周りは騒めいた。


『東條翼』は、

高校野球で有名人だ。





「は?」

「だから、『東條翼』なんでしょ」

「何で。
つーか違うから、俺は霄翼」

「舐めないで、あたしが分からないとでも?」


―――…東條くんの追っかけなのにッッ!!!!









「―――…はぁ…、

そーだよ俺は『東條翼』だよ。

前まではね。

親が離婚してめんどくせーから

母親の旧姓使ったんだよ。」


「野球部入って!!」

「やだ」

「何で!!」

「このチームが気に入ったら入る」

「え?」

「気に入らなかったら入らない」


――――…誰ですかこの傍若無人野郎はッッ





「舐めないでよ!!

あんたの力借りなくても勝てる!!」


「―…へぇ?」



あんたのその上から目線の態度、

すっっっっっごい嫌い!!!!!


あんたの悔しそうにしてる顔、

見てやるんだからぁ――――!!!!!!