―春―。

『新入生の方ですか?』

「あ,はい。」

『こちらのリボンをつけて,教室へ上がって下さい。』

「どうも。」


やけに大きな門をくぐる。
その門には…

<私立 雅山学院>

と書かれている。


新しい制服。
新しい学校。
新しい環境。


楽しみな気持ちと不安が入り交じった変なカンジで,とりあえずくぐってみる。

あたしは…

和田晴希―ワダハルキ―


今日は入学式。
そして今日からあたしは中学生。

あたしが通う雅山学院<ミヤビヤマガクイン>は,中高一貫校として,それなりに有名な私立学校。
高校にはたくさんの学科があって,特進クラスからは超難関とされる大学に進学している。

あたしはただ,公立の制服が着たくなくてこの学校を選んだ。
私立っぽい制服で,そこそこ有名なブランド。

多分他にも理由はあるんだろうけど,よくわからない。

まぁ,とりあえず今日からスタートなんだってけじめをつけた。

「ハル〜っ!」

「おぉ〜咲!」

咲は,小学校が同じで,誕生日も血液型も同じ。
二人でいる事もまぁまぁあったから,みんなからは“双子”って呼ばれてた。親友とまではいかない。
ただ仲がいいだけ――

「なんかさぁ〜高校に比べて,中等部ちっさいよね!!」

「まぁ…高校は昔からあるしねぇ…」

「だよね…ま,しょうがないか〜!」

「うん!教室行こうや!」


咲と二人で教室に上がる。

廊下に

“1年 クラス表”

と書かれた紙が貼ってある。よく見ると“A級”と“B級”の二つに分かれている。

「ハルの名前あったぁ!A級やって!!!」

「まじ〜?あっ!咲はB級やん〜!」

「え〜クラスバラバラやんかぁ!」

「でも,隣同士だから大丈夫やが〜」

「そうやね!じゃあ,また後でね〜」

そう言って,お互い教室に入って席につく。
あたしの席は窓際の後ろから二番目。
教室には,今年一年間同じクラスの人たちが何人か着ていて,みんな静かにしてた。
本を読む人,寝てる人,まっすぐ前を向いてる人…中には勉強してる人までいる。

さすが私立…。

あたしはそう思った。