1限目:中間テスト


佐倉洋平はかれこれ30分ほど、寮の廊下をぺたぺたと裸足で歩いていた。


「みかどー?どこいんだよー。返事しろよー。みっかっどー!!!」


大声で、ルームメイトの名前を叫びながら。

「み!か!どーおぉおお!」


するとすぐ近くの部屋のドアが開き、怒声が響く。


「てめえっ、洋平、さっきからうっせーんだよ!いい加減にしろよ」


寮生の一人がしびれを切らしたらしく、洋平に詰めよった。


「ごめん。でも、帝がいないんだ。見てない?」


「いま中間テスト前だぞ!?廊下で叫ぶなよ!気が散るだろ!」


「わかった。で、見てない?」


(本当にわかってんのか……?)


洋平のおっとりとした表情を見て、寮生はがっくりと気が抜ける。


「霧山なんか見てねえよ。てか、ついに逃げ出したんじゃねえの?」


「逃げ出した?……なんで?」


「霧山だって一人で勉強したいときもあるだろうさ」


「……?でも、俺は帝と一緒に勉強したいんだけど」


「お前、その手に持ってんの何?」


「プリント。明日提出の。わかんないから帝に助けてもらおうと思って」


「真っ白じゃねえかよ!お前それ全部助けてもらう気!?」


「……え……うん……」


洋平はなにくわぬ顔で頷いた。