「父さんが所かまわずなんだよ」


――俺たちが見ていても平気で目も当てられないくらいベタベタしている。教育上、悪くないか?


「それが家庭円満の秘訣さ それに葉月を愛しているし 触れたいと思うのは当然のこと」



――俺も結衣に触れたいと思っている。


「ここにいる間は結衣ちゃんをあちこち連れ出してあげると良い」


「そのつもり 数日したら旅行に出ようと思っているんだ」


片田舎の美しい景色に影響されて写真を撮りたくなって欲しい。


明日、デパートでカメラを購入してくるつもりだった。


ちょうど車は自宅の前だった。


巧みなハンドルさばきで駐車スペースに車を停めると降りようとする玲央を呼び止める。


「これが必要だろう?」


財布からブラックカードを玲央の手のひらに落とした。