「ただいまー」


明るい結衣の声が玄関でした。



「お帰りなさい」



リビングに入るとにこにことした多恵子がキッチンから出てきた。



「デート、楽しかった？」



「ママっ　デートじゃないからっ」



冷やかされて顔を赤らめた結衣は階段を乱暴に上がった。



「そんなに照れなくても良いのにねぇ？玲央くん？」



まだいた玲央に悪戯っぽい笑みを送る。



「そうですね　確かにデートでした」



そう言うと玲央も階段を上がった。



素直に認めるとは思っていなかった多恵子は階段を上がっていく後姿をポカンと見つめた。



――子供の癖に大人びてるんだからっ　そんな所は拓海さんとそっくりね。



多恵子がクスッと笑った。